事故や不祥事の当事者となった企業、特に人の口に直接入る食品を扱っている産業では、早く「安全宣言」を出して、事業の再開を図ろうとする姿が見られます。
今回の不二家の件でも、新聞記事には、「安全宣言」の見出しが躍りました。しかし、少し冷静に戻って、「安全宣言」という言葉を手掛かりに考えていくと、見えてくるものがあります。
(不二家ホームページより)
一点目に、これは、製品の安全を宣言したものではなく、安全な製品を出荷する体制ができあがったことを宣言したものであると捉えることが、正確です。例えば、ISO14001の取得を例にとると、環境にやさしい生産プロセスの構築や製品の出荷をすることが、認証取得の重要な要素となっています。しかし、ISO14001の認証を取得したからといって、それを根拠に、出荷した製品そのものが、環境にやさしいものであるということを保証するものではないため、これを宣言することは禁止されています。もし、その違反が発覚すれば、認証はく奪もあり得ます。
つまり、生産プロセスや製品企画における手順が確立されているからといって、実際に出荷されている製品が目標レベルを完全にクリアしていることの「証明」にはならないということです。
二点目に、「お客様に安心していただける体制」とは、どういう意味を持っているのかを、考えることが重要です。この言葉には、企業の文化そのものが表現されています。
当たり前のことですが、お客様が安心するか否かは、お客様の判断次第です。「安心」は、「安全」と「信頼」の相乗効果によって、得られるものです。決して、製品を提供する企業側が決められることではないのです。企業が「これだけの対策を講じたのだから、我々の製品が安心してもらえるのは当然」と考えた瞬間に、企業と消費者の信頼関係が崩壊し、「安心」はるか彼方へ遠ざかってしまいます。
それでは、私たちは、こういう場合に、どういうメッセージを地域社会に発信したらよいのでしょうか。
製品の安全は、自分たちの目標、使命であって、永遠に努力して向上し続けなければ、すぐに安全は失われるという危機感を持ち続ける姿勢を示すことが効果的です。したがって、現時点ですでに安全な体制が出来上がったということは、この向上努力を放棄したと受け取られないとは限らないということです。
したがって、安全になったから、販売を再開するのではなく、販売を再開するにあたって、安全向上への努力を続けるため「心構え」と「身構え」という二つの「構え」ができたことをもとに、重大な危機感を持ってスタートラインに立ったことを宣言することが望ましいといえます。
今回の「安全宣言」では、危機管理やクレーム対応において、重要な示唆を与えてくれる機会となりました。
末筆ながら、不二家の皆さんにも、販売再開に決して安堵せず、逆に、これからは、消費者の厳しい目にさらされるための、大変厳しい第一歩であるとの危機意識を持ち続け、再起を誓ってほしいと思っています。