2007年3月20日火曜日

【事例に学ぶ初期対応】 「原発の制御棒落下トラブル」に学ぶ。 ― 報告と情報共有(2)

 先回に続いて、事故・トラブル報告と情報共有について考えてみます。

 今般の過去の原発トラブルで、マスコミが声高に指摘した事故報告やその情報共有がリスクマネジメントや危機管理において成否の鍵を握ることはまったくその通りです。

 しかし、マスコミによる実際の報道の内容は、建設的な提言ではなく非難中傷の域を出ません。最近のマスコミ報道は、このような事件・事故・トラブルが露見すると、適正な法的プロセスを経ることなく、鬼の首を取ったように即座に糾弾・断罪しようとするケースが大半です。

 もし、事故やトラブルについて、国等の行政機関へ報告した場合、行政処分や刑事告発、行政監査や立ち入り検査など、当事者にとっては不利益や負担の増加という事態に直面することとなります。

 たとえば、鉄道、バス、トラック、タクシーなどの運輸事業者で一定基準に当てはまる事故が発生した場合に、国土交通省(運輸局)への報告する義務が事故報告規則に規定されています。最近では、バスにおいて乗客が車内で転倒する事故で、軽傷の場合でも報告すべきことが数年前の改正で規定されました。この種の車内転倒事故がバスでの人身事故の約3分の2を占めており、この種の事故発生件数を抑制できれば全体の人身事故の件数を減らすことができると当局は考えられたわけです。そこで、情報共有のため報告義務を厳しくしました。

 しかし、この報告義務の範囲拡大は、その後、思わぬ運用に用いられることとなりました。

 報告基準に該当して運輸局に報告があった場合、それを契機に監査に入り、行政処分をなされることになりました。また、一旦行政処分を受けると、それ以後1年間は事業計画の変更を認めないという不利益処分も行われることとなりました。さらに驚きは、その事業計画変更不認可の期間中に再度事故報告を行った場合は、その報告からさらに1年間、事業計画の変更が認められない期間が延長されるという、恐るべき運用がなされるようになりました。

 そもそも、バスでの車内転倒事故は、衝突事故に伴うものを除けば、利用者の乗車マナーがおもな要因であるケースがほとんどです。したがって、一事業者だけの取り組みでは効果的な対策が見込めないため、国土交通省主導の下に全国的に情報を共有して分析を行い、社会全体として事故防止を呼び掛けて取り組んでいくことがリスクマネジメントとして初めて有効な解決策を提示することになるでしょう。

 しかしながら、実際には、報告制度が本来の目的を逸脱して事業者の制裁のために運用されているため、情報共有の本来の目的効果が減殺され逆効果となってしまっています。

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