2007年3月13日火曜日

【事例に学ぶ初期対応】 「ボンバルディア社製の全日空機の胴体着陸」に学ぶ。

 連日、様々な出来事があります。今回は本日午前に高知空港(高知竜馬空港)で発生したボンバルディア社製の全日空機(エアセントラルに運行委託)の胴体着陸を教材として、リスクマネジメントと危機管理について考えてみます。

 まず、胴体着陸そのものについては、模範的な取り扱いであり申し分ありませんでした。また、乗客のインタビュー報道によれば、着陸成功後の機内の案内についてもよく訓練されていることが感じられ、落ち着くことができたという主旨のコメントがあったようです。

 注目すべきはこの後の対応です。着陸後、しばらくは乗客が降りてきませんでした。しばらくしてドアが開き、やがて乗客が飛び降りるように順次降りてきました。映像で見た感じでは、高さは60~70cm程度でしょうか。出口ドア付近に、乗務員や全日空関係者の姿は1人か2人しか見えませんでした。機長・副操縦士は、何をしていたのでしょうか。また、全日空、空港関係の地上職員は何をしていたのでしょうか。消防服を着た人と客室乗務員と思われる人が飛び降りて、着地した乗客の身体を抑える程度のことをしていたに過ぎません。

 この時点で火災や爆発などの機体に関する二次災害の処置と済ませて、その後、直ちに乗客の避難誘導に当たることが最優先と思われます。確かに、誰かに役割が決まっていた場合に、他の人は別のことに当たればよいという考え方もあります。今日のトラブルの場合は、実際に負傷者がでていない状況であれば、他のことよりもまず五十数名の乗客を、安全に避難誘導を行うこと以上に、優先すべきことは無かったはずです。この点において、マニュアルによる危機管理が、関係者の物事の本質をとらえ思考力を働かせて行動するという能力を弱めてしまった、典型的な事例であると考えられます。
そして、乗客が降り始めるまでに、十分な時間があったわけですから、乗務員を含めて、もっと多くの関係者の援助ができたと思われます。

 このときに、降り口が地上から高いことをすばやく感じ取り、階段や踏み台を用意するか、降りる前から乗客の両脇を抱えて、静かに着地させるようなサポートが必要となるのですが、とにかく、飛行機の着陸が無事に済んだことに安堵したのか、最後まで乗客の安全について気を緩めないということが、途切れてしまったようでした。
つまり、乗客の安全そのものよりも、「事故」にしないということに目が向いてしまうと、このようなことが起こります。

 私は、各種の運輸関係事業の社員教育を担当しておりますが、まさに、このようなケースを想定して、常にいかなる行動をなすべきかについて指導させていただいております。マニュアルに沿った通常モードと、思考力を最大限に発揮する必要がある非常モードの切り替えに戸惑う人が多いことが分かってきました。

 マニュアルは、やみくもに何でも当てはめればよいというものではなく、つねに、いまマニュアルを適用すべきか、マニュアルでカバーできないものは何か、ということについて考えながら行動しなければなりません。

 このオンマニュアルかオフマニュアルかの切替えスイッチに手を添えながら、全力で走り続ける姿勢が危機管理の決め手となります。

 次回は、もうひとつ、今回のトラブルの発生そのものから見えてくるリスクマネジメント上の重要なポイントについて、考えてみたいと思います。

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