2014年10月31日金曜日

総務省がSIMロック解除の方針を公表:経営戦略

 昨日、SIMロック解除の義務化に関して当サイトで記したところですが、本日、総務省がその方針を公表しました。

 私は、規制開始日前に販売した機種のSIMロック解除に応じるか否かに注目していることを記しましたが、本日発表された「ガイドライン改正案」は「2015年5月以降に新たに発売されるスマホ・タブレット等について、原則無料でSIMロックを解除」を義務付けるというものです。

 発売日が規制対象の基準となるということですが、すでにSIMフリー版が販売されているiPhoneやiPadは、携帯電話事業者の意思次第ですぐにでもSIMロック解除が可能でしょう。すでに有料でSIMロック解除を行っているAndroid機種も同様です。

 義務として最低限で対応する会社であるか、主体的・積極的に顧客の利便性向上と自社の収益向上との両立を目指す会社であるかを、しっかり見極めていきたいと考えます。


リンク

 「モバイル創生プラン」(総務省)



2014年10月30日木曜日

SIMロック解除の義務化について思うこと:経営戦略

 スマートフォン等のSIMロック解除の義務化について、連日報道されいています。
 
 例えば2年縛りの契約終了後も所有者が使用制限を受け続けるSIMロックには、モヤモヤしたものを感じていました。顧客に不都合を強いることによって囲い込む戦術は感心しません。

 私が今回注目している点の一つは、義務化の開始日の前後を通じて販売される端末で、SIMロック解除義務化以降に販売した顧客にのみ解除に応じて、義務化以前に販売した顧客には期間経過後も応じない会社が出てくるかどうかということです。

 SIMロック解除にはソフトウェア開発・修正のための投資が必要になるかもしれません。しかし、これは一度作れば同一端末全てに適用することができるので、義務化以前に販売した顧客の端末の解除に応じても、この投資額は増えません。とくにiPhone・iPadはそもそもSIMフリー版が販売されているので、新規の投資は不要だと考えられます。

 義務化前後にまたがって販売される端末でSIMロック解除に応ずるか否かによって、各社の理念・価値観が露わになるはずです。


2014年10月29日水曜日

ロケット打ち上げ失敗で凍結:リスクマネジメント

 アメリカで、ISS(国際宇宙ステーション)への物資を乗せて打ち上げられたロケットが爆発する事故が発生しました。請け負っていた企業は、事故の原因を解明するまで打ち上げを凍結するとのことです。これはリスクマネジメントとしては模範的な対応と考えられます。

 無事や成功は、偶然による場合もあります。危険が潜んでいても100%事故が起こるとは限りません。

 一方、事故・事件には必ず原因があります。その原因を深く分析して対策を打つことで、安全性を高めることができます。事故・事件は起こらないことが望ましいことは言うまでもありません。しかし、発生してしまったときは、安全性向上や経営改革のチャンスでもあるのです。


2014年10月28日火曜日

原発再稼働問題のリスク比較

 九州電力川内原子力発電所の地元である薩摩川内市の市長は28日、同発電所の再稼動に同意する意向を示しました。
 
 原発の再稼働については賛否両論がありますが、リスクマネジメントの観点から比較してみると論点がすっきりします。

 リスクの大きさは[予想される損失の程度]×[発現確率]で評価できます。

 原発を再稼働させるリスクは、放射能汚染からの外部被曝・内部被曝によって人体に直接影響を与えること、広範囲の除染が困難であることなど、人間がコントロールできない深刻な損失が想定されます。特に深刻なのは海洋の汚染です。しかし、このリスクは事故が発生した場合のみであり、国内での深刻事故の発生確率は、これまでの経験的には数十年に一度程度です。

 原発を再稼働させない現状では、穴埋めに主に火力発電が用いられています。これによるリスクは、CO2排出による地球温暖化と、有限である化石燃料の消耗などが挙げられます。これらのリスクは直接人体に影響を与えません(少なくとも日本では)。しかし、これらは歴史的に世界を揺るがし続ける食糧問題と資源問題とみることができます。つまり全地球的な観点からは、人類の平和や存亡にも影響を与えるかもしれないリスクです。これらのリスクは偶発的なものではなく、現在も継続的にかつ確実に影響・進行しているので、リスク発現確率は100%です。

 どちらを選択するかは、リスクの他にもコストや技術革新などを評価に加える必要もあります。しかし、このようなリスク評価による比較は、重要な意思決定に役立つでしょう。

 ただし、解決策は二者択一ではないかもしれません。


2014年10月27日月曜日

エボラ出血熱のリスクがさらに拡大

 エボラ出血熱の感染者がついに1万人を超えました。さらに本日10月27日、日本に入国した男性が発熱を訴え、エボラ出血熱への感染が疑われています。

 私は大学の危機管理の授業で、5年ほど前からエボラ出血熱の流行リスクをテーマの一つに取り上げていました。新型インフルエンザなどの感染症リスクとともに、いつかは来ると懸念していました。

 感染症の危機管理は、いち早い「封じ込め」が決め手になります。今回の羽田空港での発熱者発見は、見過ごしが避けられたという意味で朗報です。この患者以外に見過ごしがないことを祈ります。

リニューアルしました

当サイトをリニューアルし、再開しました。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。




2008年3月4日火曜日

イージス艦「あたご」衝突時刻の疑問 その2

 いざという時の危機管理としてだけでなく、平常時の意思決定や実践行動の土壌となる初期対応の習慣を体得いただく観点から、リスクマネジメントや危機管理に限られず、リーダーシップ、労務管理、マーケティング等に幅広く応用できる初期対応について、最新の事例をもとに学んでいきます。

 3月4日、ようやく、イージス艦「あたご」と衝突した漁船「清徳丸」の操舵室の一部が、海底で発見されたとの報道がなされた。意外にも各報道機関ともこれまでの報道に比較してニュースの扱いが大きくない。
 NHKのニュース報道では、「衝突地点の南約500mの地点で発見」との内容であったと聞こえたが、公式な発表としては確認できない。新聞各紙のインターネット上の記事では発見地点を記述しているものは今のところ見つけられない。

 さて、前回、衝突時刻についての疑問について記述したが、今回の操舵室の一部の発見地点は重要な意味を持っていると私は考えている。

 海の中のことであるから、潮流により衝突地点から流され衝突地点と発見地点とのずれが生ずる可能性はある。一方、潮流の影響を除いて考察すれば、衝突後イージス艦「あたご」の進行方向へ力が加わり、さらには、一定程度引きずられ、あたごの進行方向に流されながら沈んでいくことはほぼ確実であると思われる。つまり、衝突地点よりもあたごの進行方向である北寄りの地点で清徳丸の操舵室部分が発見されるのが自然であると考えられる。

 つまり、「衝突地点の南約500mの地点で発見」というのが私の聞き間違いでないとしたら、衝突時刻が4時7分よりも前であった疑念はかなり濃厚であるといえる。

 この衝突時刻への疑問は単なる思いつきではなく、私の真相究明の手法を適用した場合に導かれる仮説の一つである。この手法については、ここには詳しく説明することは割愛するが、情報が不足または錯綜している状況においてとくに有効なものである。

 さて、もし、衝突時刻が意図的に繰り下げられていたと仮定すると、あたごと清徳丸とが衝突した時点と、自動操舵の解除及び回避措置を行った時点とが逆転する可能性があることを前回述べた。さらに、清徳丸があたごの前方から接近してきたとの証言と、清徳丸が直前で進路を大きく変えたとの証言も、いずれも信憑性が疑われる。つまり、防衛省が最初に発表した内容のほとんどが、仕立て上げられた虚構のストーリーへの布石であるという仮説が成立しうることになる。

 以上は、防衛省を批判することを意図したものではなく、あくまで科学的考察に基づく仮説の一つである。今後の捜査により、真相が解明されていくことを願っている。

 ところで、海洋調査船「なつしま」による海底調査が、3月4日で打ち切ると発表されている。たしかに親族ら関係者の意向であることはわかる。しかし、最も重要な証拠の一部が発見された当日であり、さらに調査を進めればより多くのものが発見できる可能性が高い状況であるから、当然、再度関係者を説得し、より本格的な調査を行うべきではないだろうか。

 真相究明に本気であるなら、このような千載一遇チャンスをみすみすやり過ごすことは、まったく忍びないことである。

 

2008年3月1日土曜日

イージス艦「あたご」衝突時刻の疑問

 いざという時の危機管理としてだけでなく、平常時の意思決定や実践行動の土壌となる初期対応の習慣を体得いただく観点から、リスクマネジメントや危機管理に限られず、リーダーシップ、労務管理、マーケティング等に幅広く応用できる初期対応について、最新の事例をもとに学んでいきます。

 イージス艦「あたご」 は、2月19日の漁船「清徳丸」との衝突1分前に、自動操舵から手動へ切り替え、後進措置をとったと発表されているが、ここに、この衝突時刻に疑念を持つ。衝突時刻の改ざんが行われることがあり得ると考えている。私自身も、かつて、捜査当局が当事者として、関わりが疑われる事案で、発生時刻の改ざんに協力するよう、当局から助力を求められた経験があるからだ。もちろん、そのような偽りは、よく考えればわかることであると、お断り申し上げたのであるが、結局、真相は隠され、もう一方の当事者が知ることはなかった。

 海底に沈んだとみられる衝突の漁船の操舵室部分は、現在までに発見されていない。これは、衝突位置の認識に誤謬があることに原因がある可能性が捨てきれない。

 防衛大臣は、「衝突した時刻が4時7分ということは、公然の事実である」と2月29日の国会で答弁している。しかし、これが何の根拠にもとづいているか、よく検証する必要がある。 この衝突時刻「4時7分」は、あたご乗組員の証言に頼っている可能がある。秒単位ではなく、全てが分単位であることが、さらに疑念を深める。1分2分が問題となっているのなら、普通ならば秒単位で議論をするのが自然である。ところが、奇妙なことに、現在まで、秒単位で語られることが全くない。

 陸上交通と異なり、衝突地点の痕跡が残りにくい海上の特性を認識して、事実関係の把握に努めることが望まれる。最近普及し始めた自動車のドライブレコーダーのように、衝突時の衝突Gの記録があるのなら最も明確であるが、大型の軍艦と小さな漁船との衝突であるのなら、このような記録は残っていないかもしれない。 記録システムも備わっていないかもしれない。

 もし、その場合、衝突まで回避措置を全くとっていなかったと仮定すると、全ての事象がつながってくる。この場合、決定的に漫然と航行していたと認定される懸念が生ずる。少しでも回避措置をとったことを主張するため、衝突時刻を1分繰り下げ、手動操舵に切り替え、後進操作を行ったことを、衝突前に行ったことに脚色するというストーリーも想像できる。

 したがって、漁船の操舵室部分の捜索を行うにあたって、衝突したとされる地点よりも手前にも、海底調査の範囲を若干広げることも必要となってくるのではないかと思っている。一日も早い漁師親子の発見と、事実関係の解明がはかられることを、切に望む。

2007年5月10日木曜日

【事例に学ぶ初期対応】 「ジェットコースター事故」に学ぶ。(その2)

 いざという時の危機管理としてだけでなく、平常時の意思決定や実践行動の土壌となる初期対応の習慣を体得いただく観点から、リスクマネジメントや危機管理に限られず、リーダーシップ、労務管理、マーケティング等に幅広く応用できる初期対応について、最新の事例をもとに学んでいきます。

 エキスポランドのジェットコースターの死傷事故の件では、その後の情報の錯綜が批判のポイントとして、クローズアップされています。

 このようなアクシデントが発生した場合、深刻なもののひとつが、情報の不足と不正確の問題です。

 今回は、部品の落下場所と破損部位について、エキスポランドの当初の発表が間違っていたとの報道が流れています。原因究明のための重要な部分での間違いは、許されないというのが、多くの報道機関の主張のようです。

 たしかに、この指摘は、その通りではあります。しかし、混乱のさなかで、当初伝えられた情報が、すべて正確なものであると鵜呑みにすることは、避けるべき第一歩です。

 情報伝達を商売としているマスコミ報道機関が、このような初歩的な混乱に振り回され、挙句の果てに事故で混乱している当事者だけに情報伝達の責任を押し付けているのを目の当たりにすると、見苦しく目を背けたくなります。

 このような、情報の錯綜はほとんど常に起こります。この混乱に振り回されない情報戦略のポイントとして次のような点が挙げられます。

1. 間違っている可能性がある情報も含めて、できるだけ多く収集する。
2. 各情報が、正しいか、間違っているかについて、軽率に判定しない。
3. 情報の出処、判断根拠、情報伝達経路等を、併せて記録、伝達する。
4. 情報の追加・訂正をポジティブに評価する。

 これらの点に留意しつつ、情報の検証を慎重に進めていくことが、今回のような当初の情報混乱の中においても、戸惑うことなく的確な判断と行動の基礎とすることが可能となるのです。

 この情報戦略、初期対応の重要な柱のひとつで、危機管理のみならずマーケティング情報は労務情報など多くの場面で活用することができます。

 今回のジェットコースター事故では、当事者のエキスポランドと報道機関との両者にこれらの情報戦略スキルが未熟であったことがわかります。しかしながら、しっかり初期対応の情報管理を身につけていれば、情報が不足している状況においても致命的な状況に陥ることなく、冷静、的確な判断と行動ができるリーダーシップを高めることも決して無理ではありません。

2007年5月5日土曜日

【事例に学ぶ初期対応】 「ジェットコースター事故」に学ぶ。(その1)

 いざという時の危機管理としてだけでなく、平常時の意思決定や実践行動の土壌となる初期対応の習慣を体得いただく観点から、リスクマネジメントや危機管理に限られず、リーダーシップ、労務管理、マーケティング等に幅広く応用できる初期対応について、最新の事例をもとに学んでいきます。

 ゴールデンウィークも終わりに近づいたこどもの日の今日、大阪と福井とで遊園地のジェットコースター事故が相次いぎました。

 リスクマネジメント及び危機管理の観点から、事故原因や保守管理の問題については多くの人たちが述べることになるので、ここでは独自の初期対応の視点から、最近の日本において特徴的なことが顕著に表れたことについて記します。

 今回の事故のマスコミ報道で特徴的なことは、中には負傷者らに加えて事故現場の近辺にいた人たちのなかで死傷者を見て気分が悪くなり、病院へ搬送された人があったとの内容です。

 私自身も人の怪我や血を見るのは平気な方ではないので、これらの人たちには本当に気の毒だと感じます。

 ところで、先日JRの特急車内で女性が脅迫暴行を受けた事件がありました。この事件のとき、事情を察知した他の乗客が犯人に凄まれて、何もできなかったと述べているとの報道に接しました。

 今の日本人には、加害者でなく、また法律上の保護責任もないという状況の下であれば、我関せずの振る舞いでも良心の呵責が沸きにくいという人が、多くなっているのではないのかと心配をしているわけです。

 加害者か被害者かは、法律的な責任関係に従って判断されるのが通常です。まさに、ここにこそ初期対応の重要な課題が潜んでいます。ここでは、法律より良心が優先するということを主張したいわけではありません。初期対応の真髄に触れるヒントが隠されていることに気づいていただきたいのです。

 ジェットコースター事故と特急車内の女性脅迫暴行事件とは、事柄そのものの性格は大きく異なりますが、近傍にいた人たちの動静に着目すると、意外な共通点が見えてくるはずです。リスクマネジメントや危機管理の根幹を左右する初期対応の課題がここにあります。

 今日のジェットコースター事故の目撃者が、事故を目撃したために精神的苦痛を受けたとして「被害者」として名乗りをあげないまでも、マスコミがこれを唆す報道をするというようなことが起こるのではないかと心配しているというわけです。しばらく注目して見守りたいと思います。

 関係者の人たちには、心よりお見舞いを申し上げます。

2007年4月3日火曜日

初期対応の心得 第9回 緊急時に冷静に行動判断できない理由

 事故、トラブルに直面したときや、クレームを受けたときに、頭が真っ白になってどうしたらよいのか分らなくなることがあります。
このようなとき、多くの人は、
  • 立ちすくむ。
  • 右往左往する。
  • 逃げ出す。
  • 責任を他人に押し付けて、知らん顔する。
  • 大したことではないと解釈し、普段のルーチンワークにあてはめようとする。
大抵はこのいずれかに陥ることになります。

 なぜ、人は大事な時にこのような混乱に陥り、誤った行動をとってしまうのでしょうか。

 事故、トラブル発生時の危機管理やクレーム対応は、定常業務ではなく、異常時モードに切換えることが必要です。異常時モードと平常時モードでは、何が異なるかといえば、異常時には時間と人手が不足するということです。なぜなら、企業では平常時に最低限必要な人数を配置しているのが普通です。異常時には、通常とは異なる業務が発生することになりますから、常に人が不足します。また、ひとりに追加の行動が求めらるので、時間が足りなくなります。

したがって、「できること」よりも「なすべきこと」の方が多くなります。つまり、不可能な状態に陥ります。追い詰められた状態で不可能なことをなさなければならないこととなり、思考のオーバーフローを起こしてしまいます。

 このような状態になると、上に5つ挙げたような態度をとってしまうこととなります。
「初期対応の心得」をしっかり身につけると、このような「途方に暮れる」ことが少なくなり、いかなる場面でも、冷静・的確に行動できるようになります。

2007年3月29日木曜日

【事例に学ぶ初期対応】 「原発の制御棒落下トラブル」に学ぶ。 ― 報告と情報共有(3)

 原発の制御棒落下トラブルの「隠蔽」が、さらに東京電力でもあったことが報道されました。マスコミ各社はトラブル情報を隠蔽したことを非難するのに躍起になっています。
私は先回このブログで、報告と情報共有がうまくいかない要因について触れました。情報共有は罰則規定などのペナルティを設けてもうまくいかないことと、そもそも自己に不利な情報を報告することをいくら責めてみても甲斐のないことなどについて書きました。
皆さんの所属する企業や組織でも、情報共有がうまくいかないと考えている人が多いのではないでしょうか。

 では、どのようなことをすればトラブル報告や情報共有が活発になるのでしょうか。
この課題については、後々、初期対応の本論で述べていきたいと思いますが、今回は現場と当事者の意思決定の仕組みについて分析してみます。

 まず、報告する当事者や現場は、報告することによって損するか得をするかというとても単純な天秤によって量ります。そして、多くの場合、報告しないほうが得だと判断することになり、結局、報告しないこととなります。これは減点主義の組織であればより明らかです。また、行政が絡む場合には不利益な結果が明らかでるので、望ましい報告は期待できません。
そこで、報告しなかった場合の処罰をさらに厳しくして、報告しないことの損を大きくすることで報告させようとすることがあります。先回紹介したバスの車内事故報告の事例が典型例で。しかし、これには限界があることがすぐにわかります。なぜなら、重大な事故・トラブルが発生したときに予想される不利益が大きすぎて、頭の中が真っ白になって冷静な判断ができなくなり、深刻な事態に陥ってしまいます。

 私がアドバイスさせていただく方法は、報告によるメリットを大きくする態勢づくりです。

 これには、大まかに整理すると2つに整理できます。
  1. 自ら報告することによって、罰を減免する。
  2. 報告すること自体にメリットがあることを信じさせる。
 一つ目の罰の減免は、刑事事件の「中止犯」や「自首」として制度化されているものも有名です。

 二つ目の報告するメリットを確信させることはとても難しいのですが、効果は絶大です。報告することによって自分が助けてもらえると信じられることができるような仕組みができれば、パニックになって冷静な判断が困難なケースでも大いに役立つことになります。しかしながら、これを実現している企業や組織は皆無に等しいと思われます。しかし、この仕組みづくりが初期対応の基礎となることを覚えておいていただきたいのです。

2007年3月20日火曜日

【事例に学ぶ初期対応】 「原発の制御棒落下トラブル」に学ぶ。 ― 報告と情報共有(2)

 先回に続いて、事故・トラブル報告と情報共有について考えてみます。

 今般の過去の原発トラブルで、マスコミが声高に指摘した事故報告やその情報共有がリスクマネジメントや危機管理において成否の鍵を握ることはまったくその通りです。

 しかし、マスコミによる実際の報道の内容は、建設的な提言ではなく非難中傷の域を出ません。最近のマスコミ報道は、このような事件・事故・トラブルが露見すると、適正な法的プロセスを経ることなく、鬼の首を取ったように即座に糾弾・断罪しようとするケースが大半です。

 もし、事故やトラブルについて、国等の行政機関へ報告した場合、行政処分や刑事告発、行政監査や立ち入り検査など、当事者にとっては不利益や負担の増加という事態に直面することとなります。

 たとえば、鉄道、バス、トラック、タクシーなどの運輸事業者で一定基準に当てはまる事故が発生した場合に、国土交通省(運輸局)への報告する義務が事故報告規則に規定されています。最近では、バスにおいて乗客が車内で転倒する事故で、軽傷の場合でも報告すべきことが数年前の改正で規定されました。この種の車内転倒事故がバスでの人身事故の約3分の2を占めており、この種の事故発生件数を抑制できれば全体の人身事故の件数を減らすことができると当局は考えられたわけです。そこで、情報共有のため報告義務を厳しくしました。

 しかし、この報告義務の範囲拡大は、その後、思わぬ運用に用いられることとなりました。

 報告基準に該当して運輸局に報告があった場合、それを契機に監査に入り、行政処分をなされることになりました。また、一旦行政処分を受けると、それ以後1年間は事業計画の変更を認めないという不利益処分も行われることとなりました。さらに驚きは、その事業計画変更不認可の期間中に再度事故報告を行った場合は、その報告からさらに1年間、事業計画の変更が認められない期間が延長されるという、恐るべき運用がなされるようになりました。

 そもそも、バスでの車内転倒事故は、衝突事故に伴うものを除けば、利用者の乗車マナーがおもな要因であるケースがほとんどです。したがって、一事業者だけの取り組みでは効果的な対策が見込めないため、国土交通省主導の下に全国的に情報を共有して分析を行い、社会全体として事故防止を呼び掛けて取り組んでいくことがリスクマネジメントとして初めて有効な解決策を提示することになるでしょう。

 しかしながら、実際には、報告制度が本来の目的を逸脱して事業者の制裁のために運用されているため、情報共有の本来の目的効果が減殺され逆効果となってしまっています。

2007年3月19日月曜日

【事例に学ぶ初期対応】 「原発の制御棒落下トラブル」に学ぶ。 ― 報告と情報共有(1)

 北陸電力志賀原発1号機の臨界事故に関連して、1988年と1991年に東北電力女川原発1号機と中部電力浜岡原発3号機でも、沸騰水型軽水炉で原子炉の定期検査中に制御棒が抜け落ちるというトラブルがそれぞれ発生していたが、国に報告がなかったことが大きく報道されました。

 この事例をもとに、3回にわたって、リスクマネジメントや危機管理について学ぶことにします。

 まず、今回のトラブルにおけるマスコミ報道の主なポイントを挙げてみます。

  1. 制御棒の脱落は臨界事故につながるおそれがあったのだから、国に報告すべきであった。
  2. 国への報告が法令上の義務がないとしても、トラブル発生について情報共有をしておけば後の原発事故・トラブルを防げた可能性があったのだから、「情報共有」の目的で国への報告または公表すべきであった。
  3. トラブルの報告または公表しなかったのは、原発を運用する電力会社の安全意識が低かったことの表れである。
 たしかに、これらの主張は至って真っ当なものであるといえます。情報を素早く伝え、関係者と情報共有を行うことは、リスクマネジメントにおいても大変重要なポイントです。また、危機管理においても、情報の伝達・共有が重要であることは言うまでもありません。

 次回は、情報の伝達・共有が阻害される要因について考えていきます。

2007年3月16日金曜日

【事例に学ぶ初期対応】 「ライブドアの堀江貴文元社長に実刑判決」に学ぶ。

 本日、東京地裁で、ライブドア元社長の堀江貴文(ホリエモン)氏に、懲役2年6月の実刑判決が言い渡されました。


 今回の事件を通じて、リスクマネジメントおよびコンプライアンスの観点から、独自の分析を試みてみます。

 まず、資本市場とは、それ自体が目的ではなく、社会の発展のための仕組みです。つまり社会の「道具」であるといえます。

 資本主義に組み込まれた事業会社は、事業そのものの道義性については、今後もより厳しく問われていくことになると思います。

 一方、事業そのものではなく、それがペーパー化された資本市場は、取引自体の道義性を問うことはほとんど無意味で、ゲームと同じでルール内での創意工夫を最大限に発揮して妙手を繰り出すのがプロフェッショナルであるということになります。つまり、この「市場」内ということに限定して考えれば、ルールを最も自分に都合よく利用して最大の利益を上げる者が勝利者となります。

 たしかに、同義的な行動を行うことが全く意味がないかと問えば、決してそうではありません。たとえば、持ち株を時価よりも大幅に安く売却し、多くの者に利益を与えることがあれば感謝されることでしょう。

 しかし、本来の市場というのは善意を必須とする場ではないのです。狡猾に利益を追求する者が勝者となります。そういう意味で、実態社会とはまるっきり異なる世界であることを理解しなければならないということです。

 ただし、ルールを守るということは、市場において唯一かつ絶対に求められることです。ルールが守られなければならないし、ルールに明確に違反していればペナルティなり退場させられなければなりません。しかし、その線引きは明確でなければなりません。サッカーで例えれば、フィールド上の選手は、ボールをキープする相手チームの選手に対して、ボールを奪い取るためにファールにならない程度でアタックしなければなりません。そうでなければ消極的であると評価されてしまい、以後の試合に出場できなくなるでしょう。とても心優しい選手がいたとして、最近成績が思わしくない相手チームの選手にチャンスを与えるためにボールを渡してしまったら、どうなるでしょうか。ボクシングや相撲の世界も想像していただいたら、これ以上の説明の必要はないでしょう。

 しかし、審判から反則をとられては損をしてしまいます。つまり、その境界線ぎりぎりのところで、いかに知恵を発揮するのが勝敗の分かれ目になります。
もし、道義的な行動をルール化するとどうなるでしょうか。たとえば、サッカーでゴールが決まると、次のプレイは得点を取られたチームのキックオフで始まります。このように、明確で客観的に適用できるルールを作っておけばゲームは成立するし、面白くなります。

 したがって、堀江貴文元社長が繰り返し主張しているように、ルールを変更していくべきだという主張もそれなりの論拠があるといえます。

 しかし、現実には彼はゲームの敗者となりました。彼の最大の失敗は、現実の事業分野で製品・サービス提供において実態が薄かったため、バーチャル世界である資本ゲームでの勝敗が現実の事業そのものに極めて大きな影響を与えてしまったということでしょう。

 そういう意味で、ライブドアの事業形態そのものがリスクの高い構造となっていたといえます。ライブドア事件の逮捕とそれに続く裁判は、ライブドアの事業のリスク構造が、顕在化される引き金(ペリル)になったと見ることもできます。

 大規模地震が発生して建物が倒壊する例をとれば、地震の発生が引き金となりますが、耐震性の低い建物の構造そのものがリスクであるといえます。リスクマネジメントに取り組む場合、地震の発生に注意することも必要ですが、それよりも建物構造に注目して対策を立てておくことも大変重要なポイントになるというわけです。

2007年3月13日火曜日

【事例に学ぶ初期対応】 「ボンバルディア社製の全日空機の胴体着陸」に学ぶ。

 連日、様々な出来事があります。今回は本日午前に高知空港(高知竜馬空港)で発生したボンバルディア社製の全日空機(エアセントラルに運行委託)の胴体着陸を教材として、リスクマネジメントと危機管理について考えてみます。

 まず、胴体着陸そのものについては、模範的な取り扱いであり申し分ありませんでした。また、乗客のインタビュー報道によれば、着陸成功後の機内の案内についてもよく訓練されていることが感じられ、落ち着くことができたという主旨のコメントがあったようです。

 注目すべきはこの後の対応です。着陸後、しばらくは乗客が降りてきませんでした。しばらくしてドアが開き、やがて乗客が飛び降りるように順次降りてきました。映像で見た感じでは、高さは60~70cm程度でしょうか。出口ドア付近に、乗務員や全日空関係者の姿は1人か2人しか見えませんでした。機長・副操縦士は、何をしていたのでしょうか。また、全日空、空港関係の地上職員は何をしていたのでしょうか。消防服を着た人と客室乗務員と思われる人が飛び降りて、着地した乗客の身体を抑える程度のことをしていたに過ぎません。

 この時点で火災や爆発などの機体に関する二次災害の処置と済ませて、その後、直ちに乗客の避難誘導に当たることが最優先と思われます。確かに、誰かに役割が決まっていた場合に、他の人は別のことに当たればよいという考え方もあります。今日のトラブルの場合は、実際に負傷者がでていない状況であれば、他のことよりもまず五十数名の乗客を、安全に避難誘導を行うこと以上に、優先すべきことは無かったはずです。この点において、マニュアルによる危機管理が、関係者の物事の本質をとらえ思考力を働かせて行動するという能力を弱めてしまった、典型的な事例であると考えられます。
そして、乗客が降り始めるまでに、十分な時間があったわけですから、乗務員を含めて、もっと多くの関係者の援助ができたと思われます。

 このときに、降り口が地上から高いことをすばやく感じ取り、階段や踏み台を用意するか、降りる前から乗客の両脇を抱えて、静かに着地させるようなサポートが必要となるのですが、とにかく、飛行機の着陸が無事に済んだことに安堵したのか、最後まで乗客の安全について気を緩めないということが、途切れてしまったようでした。
つまり、乗客の安全そのものよりも、「事故」にしないということに目が向いてしまうと、このようなことが起こります。

 私は、各種の運輸関係事業の社員教育を担当しておりますが、まさに、このようなケースを想定して、常にいかなる行動をなすべきかについて指導させていただいております。マニュアルに沿った通常モードと、思考力を最大限に発揮する必要がある非常モードの切り替えに戸惑う人が多いことが分かってきました。

 マニュアルは、やみくもに何でも当てはめればよいというものではなく、つねに、いまマニュアルを適用すべきか、マニュアルでカバーできないものは何か、ということについて考えながら行動しなければなりません。

 このオンマニュアルかオフマニュアルかの切替えスイッチに手を添えながら、全力で走り続ける姿勢が危機管理の決め手となります。

 次回は、もうひとつ、今回のトラブルの発生そのものから見えてくるリスクマネジメント上の重要なポイントについて、考えてみたいと思います。

2007年3月12日月曜日

【事例に学ぶ初期対応】 「日興コーデイアルグループの上場維持」に学ぶ。

 日興コーディアルグループが上場維持されることを東証が発表しました。この判断が適切であったか、そうでなかったかの判断については、ひとまず置いておくことにします。
まず、この結論は、日興コーディアルの現経営陣にとってはよい報告であることは間違いないでしょう。

 このような望ましい結果を目指して危機管理を実行することが、危機管理にかかわる人たちにとって最大の目標であることに異論は少ないでしょう。しかし、このような望ましい結果は、優れた危機管理によってもたらされるとは限らないことに留意することが必要です。

 というのは、望ましい結果得られるのは、危機管理の優劣ではなく、政治的影響力や財務力といったものによって決まることが少なくありません。日興コーディアルグループとライブドアとの違いはこれをよく反映しています。危機管理の程度でいえばどちらも初歩レベルであって、当たり前のことがなされたに過ぎません。

 危機管理において、「結果は重要ではない」という逆説的なことを述べることに不思議に思われるかもしれません。しかし、このように、結果第一主義をとることによって、あまりに多くのものを見失ってしまうことを知っていただきたいのです。
つまり、危機管理で失敗をもたらす要因は多くのケースで、結果にこだわり過ぎることにあります。

2007年3月9日金曜日

初期対応の心得 第8回 臨機応変の危機管理3

 先回は、臨機応変な対応は、ぶれない価値観を持ってどのような行動をするのかを決めるによって実現できることを書きました。

 したがって、まず、会社が護る(守る)べきものごとの優先順位(コーポレートプライオリティ)をあらかじめ決定しておくことが第一歩となることが分かるでしょう。

 たとえば、鉄道事業であれば、人の命を1番とするか、列車が遅れないという運行の正確性をとるのか、列車頻度やスピードアップという利便性をとるのか、明確に決めておかなければ的確な初期対応態勢が構築できないということです。

 ちなみに、鉄道会社であればどの会社も「安全綱領」などに、輸送の安全を第一優先順であることが文書で明記されています。

 それなのに、なぜ、JR西日本福知山線の尼崎脱線事故が起きてしまったのでしょうか。これについては、様々な傾聴に値する見解が出されていますが、いずれ、初期対応態勢の観点からも見ていきたいと思っています。

2007年3月6日火曜日

初期対応の心得 第7回 臨機応変の危機管理2

 「場当たり的」と「臨機応変」は、どちらも、その時々で、対応方法が変化するという点で、とても似ています。

 しかし、この二つは、その根幹において、まったく異なる性質を持っています。

 「場当たり的」は、心の軸がないため、その行動もその時々で異なってくるのです。場当たり的な対応をする人は、多様なトラブルやクレーム対応における状況変化ではなく、自分自身の心の揺れによって、行動を変えます。

 一方、「臨機応変」とは、確かな価値観の軸をしっかり持っていて、しかし、その時々の状況が微妙に一つ一つ異なることを把握して、その対応方法を変化させるのです。「臨機応変」な対応を行う人は、自分の感情によってではなく、状況の変化を読み取り、ぶれない価値観に照らし合わせて行動を決するのです。

2007年3月5日月曜日

初期対応の心得 第6回 臨機応変の危機管理1

 これまでも述べてきたとおり、初期対応は、危機管理、リスクマネジメント、クレーム対応をはじめ、経営のあらゆる側面に適用することが可能で、組織変革や成長の効果が期待できます。
 しかし、話を広げすぎると初期対応のポイントがぼけてしまうおそれがあるため、これからしばらくは、事故やトラブルが発生したときやクレームを受けたときを想定して話を進めていきます。

 まず、最も基本となるのは、「その場しのぎ」や「場当たり的」な対応ではない「臨機応変」な対応力です。これらがいかなるものであるのかを次回以降に見ていくことにします。

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